風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『永遠と横道世之介 下』 吉田修一

30代になった世之介の日々。

上巻
『永遠と横道世之介 上』 吉田修一
https://gotoblueseabicycle.hatenablog.com/entry/2026/01/09/050002
 
さて、下巻ですが
 
相変わらず彼は、損得勘定とは無縁のまま生きている。
要領よく立ち回ることも、賢く自分を守ることもできない。
けれど、彼と出会った人たちの人生には、確かに世之介という存在が刻まれる。
 
特別な成功を収めたわけでもなく、
社会にとっては取るに足らない存在かもしれない。
それでも世之介は、ふとした瞬間に思い出される。
何かを成し遂げた人物としてではなく、
「確かにそこにいた、忘れられない人」として。
 
憧れという言葉とは少し違う。
いつまでも心の奥に残り続ける、
本当の意味でのヒーローのような存在だ。
 
上巻を読み終えたとき、あれほど下巻を待ち望んでいたはずなのに、
読み進めるほどに、何度も「終わらないでほしい」と願ってしまう。
物語の終わりが近づくことが、こんなにも切ないなんて不思議だ。
 
誰かに優しくした時間。
たわいもなく笑い合った記憶。
それらの積み重ねこそが人生なのだと、
じわじわと体温を上げるように、静かな熱情が胸に残る。