
夫は、まるで別人のように冷たくなった。
私は――夫を殺した。
息子の翔が、もうすぐ幼稚園から帰ってくるというのに・・。
物語の鍵を握るのは、ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』に登場する怪物の名を冠した「ジャバウォック」。
それは脳が見せる悪夢なのか、排除すべき敵なのか、それとも味方なのか。
正体の掴めない存在を前に、人は容易にレッテルを貼り、憎しみの連鎖を加速させていく。謎は深まるばかり
言葉が通じない相手に対して、人はつい「こちらが正義で、あちらが悪だ」と思い込んでしまう。
だが、視点を少し変えるだけで、その構図はあっけなく反転する。
正しさとは、これほどまでに脆く、主観的なものなのだ。
本当に恐ろしいのは、ジャバウォックという怪物そのものではない。
恐怖の正体は、人間の本質――他者を敵として作り上げてしまう心にある。
その強烈なメッセージが、物語全体を貫いている。
自分たちの内側に生み出した、実体のない敵意。
凝り固まった固定観念に「さよなら」を告げたとき
物語は見事な伏線回収を迎える。
「自分の本質とは何か」を問いかけてくる物語。