風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『妊娠カレンダー』 小川洋子

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芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」や「ドミトリィ」
「夕暮れの給食室と雨のプール」の三編の小説。
小川洋子の繊細で冬の空気のように密度が濃く
澄んでいて心の底に届くような文章で描かれた悪意は
怖かったなぁ・・。
奥底に得体の知れない感情が巻き起こりますね。
この穏やかでは居れないこの気持ちは
どこからやってくるのだろうか?
「妊娠カレンダー」を読みながら
姉の不安とバランスを欠いた暮らし
悪意のある妹の行いを思いながら
人の心に仕組まれた悪は普遍的なものなのだろうか?
不気味で得体の知れない
重たい空気・・気がつくと酸素が少なくなってるような感覚。
「ドミトリィ」でも不気味な時間
例えるならば・・
誰も居ない理科室の匂い
夕暮れの音楽室
真夜中の校舎などを思いだしたなぁ・・
この作品ではそんなシーンはないのだけども
そんな不思議な時間と場所の持つ
時空のねじれを感じて・・これまたゾクゾク・・・。
「夕暮れの給食室と雨のプール」にしても
懐かしさに記憶がリンクして
ある普遍的な空白を表現して
あたかもそれがそこに在ると思ってしまう巧みな作品
西田幾多郎って哲学者の言葉にありますが
「花が花の本性を現じたるときもっとも美しくなるがごとく、
人間が人間の本性を現じたる時は美の頂点に達する。」
美は美しくも恐ろしいものかもしれないな・・。