風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『歌うクジラ (上)』 村上龍

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2022年推定年齢1400歳のザトウクジラが
グレゴリオ聖歌の旋律を繰り返し歌っている
その血液を採取して遺伝子解析してみたら・・・
不老不死の遺伝子を巡り冒険の旅が始まるー

村上龍らしい描写と実態を感じる重みのある想像力は
この突拍子のない話に厚みとリアリティを与える。
「生きる上で意味を持つのは、他人との出会いだけだ。
移動しなければ出会いはない」と本文にあったけども。
この物語との突然の出会いもそうですねぇ
SFでありながらも現実よりもリアルなのは何故か?
的確なディテールに問題をより浮彫りにするからだろうなぁ。
その中に抉るような鋭く切れのある文章の数々
階層社会の世界の中で暮らすと
「屈辱という概念には前提があるようなきがした
対等とか平等とか、幻想的で郷愁を誘う言葉が前提にある」
とか現代社会に潜む本質を突いた矛盾
生きる原動力となる想像に対しては・・
「現実以外のものを想像するのは無意味で
ときに有害であると徹底してすりこまれると人間の精神は安定する」
恐怖や不安とは何か?
想像の先にあるもの
それが現実を超えた恐怖と不安を作り出すのかもしれないですね。
死に対してもそうかもしれないし
そこにある力の光と影
管理された世界から外界には何があるのか?
この旅の先にある真理とは・・
村上龍さんの想像力と文章力って
ずば抜けて凄いといつも舌を巻きます
さて下巻へ・・・