風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子

イメージ 1

満ち足りた世界は美しく完璧であり幸せな世界なんだろうなぁ
読んでてそんな幸せな世界に浸ってました。
人はそんな世界を求めて見果てぬ世界や哲学、宗教へと旅するのだろうけど
何処にもそんな世界はないですよね
もう皆が持ってるものだから・・
まるで青い鳥みたいなこと書いてますが・・(笑)
主人公のリトル・アリョーヒンは
「計算上、チェスの可能な棋譜の数は十の一二三乗あるんだ。
宇宙を構成する粒子の数より多いと言われるよ」と言ってましたが
チェスの宇宙、彼のパーフェクトワールドへ思いを馳せ強く深く共感するのは
私も同じベクトルを持ってるのだろう・・。
今まで嵌った趣味を考えると単車、車、釣り、ウィンドサーフィン
波乗り、スキー、自転車、読書、映画・・
部活は陸上と基本一人のものって多いよなぁ。
決して孤独じゃない満たされた瞬間に
自分と向き合う事の悦楽な時間
そんな時間の過し方には本文にもありましたが
「哲学も情報も教養も品性も自我も欲望も記憶も未来も、ともかくすべてだ。
隠し立てでできない。チェスは人間とは何かを暗示する鏡なんだ」
自分と向き合うと見えてくる多くの大切なものがある
村上春樹の小説に出て来る井戸の中の僕や
太宰の私にも共感するテーゼがあると思うんですよね。
そこには本文にあった美しさ
「駒の動きに隠された暗号から、バイオリンの音色を聴き取り
虹の配色を見出し、どんな天才が言葉にできなかった哲学を読み取る能力は
ゲームに勝つための能力とは別物である」
であったり
「最強の手が最善とは限らない。チェス盤の上では、強いものより
善なるものの方が価値が高い。」
そこには満たされた安らぎと至福がある
世界はすばらしもので溢れているんだよなぁー
暗いニュースを見て喪失感に浸りながらも
一筋の光が射す瞬間の幸福感。
ほんと棋譜は、詩や音楽のように美しいと思います。
この作品のように・・・。

余談ですが・・
さっそくチェスを嫁さんと対戦。
アリョーヒンのようには美しいハーモニーを奏でる事は
出来なかったけれども
自分なりの音を奏でながら
運ぶ駒にインディラやミイラへの思いを馳せました