風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『サクリファイス』 近藤史恵

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冒頭のロードバイクの事を
「この世でもっとも美しく効率的な乗り物。
最低限の動力で、できるだけ長い距離を走るために
恐ろしく計算され尽くしたマシン」と書いてましたが
その美しい乗り物に乗り走るサイクリストだけではなく
知らない人が読んでも十分楽しめる話です。
この本は第10回大藪春彦賞を受賞
2008年本屋大賞にも入賞して確か「ゴールデンスランパー」に続く次点って作品
自転車ロードレースを舞台にサスペンスが繰り広げられる
自転車乗りならではの気持ちの描写や専門用語をを読んでると
走りたくなりますねぇ・・
レースでのリアルな駆け引きやアシストの役割
このタイトルのサクリファイスとは犠牲って意味ですが
これは読んでから謎を解いてくださいね。
いい仕事と表現され称えられる彼らアシストの夢と汗とを背負って走るエース
本文にあった表現でエースがアシストに言います
「馬鹿を言うな、と。俺達は一人で走ってるんじゃないぞ。・・
非情にアシストを使い捨てて、彼らの夢を喰らいながら、俺達は走ってるんだ
だから、それを汚す奴は許さない。自ら勝利を汚すことは
アシストたちの犠牲も汚すことだ、と」
誇りと責任を背負い走るスポーツって他にあるのかな?
「賞金こそ分配されるが、勝者としての記録に残るのはたったひとり
エースの名前だけだそれがほかの団体競技と自転車ロードレースの違いである」
この輝きの裏側には多くの努力の結晶がある。
その心理戦や駆け引きや引きずった過去・・・
アシスト、エースそれぞれのプライドに思いを馳せながら
レースを見るとまた何か違う感動が心を過るのは間違いなしです。
ちなみに自転車乗りではない嫁さんが読んで
レース物として読んでも面白い・・と言ってましたから
ロードレースハウツー本としてもいいんじゃないかな。