風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け (上)/(下)』白石一文

イメージ 1

最近、私が問うことと同じ問いを
このフジサキって主人公は考える
引用が多くて斬新な小説ですが私は面白く読みました。
この問いってのが多岐に渡り
所得格差の問題だったり貧困、ワーキングプア
家族の問題、政治批判、官僚制批判
経済、セックス、結婚、宗教など
世の中の矛盾はどこまでも改善されないばかりか
混迷を深めてるんですよね。
なぜ時代は進んでより高度な社会になっても
なぜ笑顔は世界中に溢れないのだろうか?
その考察が私の考えてる事に似かよってるんで
同じベクトルを持った人なんだなぁ・・って
話の内容よりもそんなことを思って読み進んでました。
ストーリーはこの事を語るための話ってみたいな印象で
こちらに期待した人は落胆するかもしれませんね。
何が様々な問題から人々を救うのか?
人としての構造に致命的な欠陥がるとしか思えない現状
一番的を得てると思うのが
「世の中に問題が起こるのは、私たちみんなが他人の不幸に余りにも無関心だからだ・・」
遥か遠い国の遠い何かがやがて津波のように高く自分の心に響く・・
そんなことはまるでないでしょうね。
そう言う意味での希望って全くないですよね。
じゃあ神はどこで何してるのか?
「全知全能であるはずの神の力が、この世界ではどうしてこうも無力なのか?
神の力が金銭の力にどうしても勝てないのはなぜなのか?」
それは偽善の作り出した虚構の世界であり
神はこのタイトルにもあるように
「この胸に深々と突き刺さる時間という長く鋭い矢
偽りの神の名が刻まれた矢をいまこそこの胸から引き抜かなければならない」
そう語られてました
こうも言ってます
「神頼みに頼るのは自らが直面する重大な問題に対して
永久に目を背けたいからに他ならない・・・」
何か希望のない物語のようですが
私はだからこそ人は悩みながらも
人を信じ愛を語る
その儚さを感じながらも今を生きるのだと
そう思うのです。