ピアノの調律師として、顧客と真摯に向き合い
ピアノを通して先輩や育った環境と向き合う
成長と苦悩と希望を綴った物語。
2016年 本屋大賞受賞作
本のすばらしき美点は時間や空間を超え
制限なく、それぞれの人生に深く触れることが出来ることだと思うんですが
主人公のピアノの調律師が真摯にピアノへの向き合い
調律を通して顧客の気持ちや未来の幸福へ
心を寄り添わせす姿が心を打ちました。
一般的に媒体を通したエンターテイメントとなると
才能あるヒーローやカリスマのある主人公設定となりがちですが
この作品の主人公はヒーローではなく普通の人である彼の言葉。
「才能があるから生きていくんじゃない。
そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。
あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。
もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。」
試行錯誤しつつ、音と依頼者の人生に向き合う姿は
地道で真摯な生き方のすばらしき美しさををも感じる。
それを素っ気なく力を添える先輩達の姿や
顧客である双子の姉妹との関わりが
神が仕組んだ必然であるかのように
美しいものを生み出す。
人生に大切なものを見つけて
「あぁそうか!」と腑に落ちるそんな感覚を覚えました。
この物語が多くの人に支持されるならば
この殺伐とした世界は変わるのではないかと思うぐらい
お勧めしたいお話しでした。