風の音だけが週末のConversation

一粒の砂に世界を求め 野の花に天国を見出す 掌の中に無限を捉え ひと時のうちに永遠を築く この詩のように生きたいな

『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ

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介護者キャシーは旧友のルースとトミーも介護した。
愛する人々と自らの運命とは……。
この『わたしを離さないで』は《タイム》誌のベスト100(1923~2005年発表の作品)に選ばれ
ニューヨーク・タイムズ》《パプリッシャーズ・ウィークリ ー》《シアトル・タイムズ》
《グローブ・アンド・メール》においても2005年のベストブックの一冊に選定作品。

ノーベル文学賞で話題になったカズオ・イシグロさん
私の敬愛する村上春樹さんも読んでると記事を見かけて気になってた作家でした
待望の『わたしを離さないで』をワクワクしながたページを捲る。


第一印象は一言で言うならばソリッド!
最初っから最後まで中身の詰まった感覚と
仮想の設定でありながらも自分がすっかりとその世界に浸りつつ
思考を刺激され自然に心に湧き起るものがある。

主人公の学生時代から同級生を看取ることとなるまでの時間の流れを
丁寧に描き微妙な心境の変化と変わり行く人を見る視線


私も時間を経て感じる同級生との微細なすれ違いとを重ね合わせたり
避けられない運命について考えたりもした。

物語の流れでしか表現できないで想いの数々
そこから心へ吹く風

運命と呼ばれるものが世界を覆う空のように


いつも自分の周りを囲み意識せずとも絶えず影響を与える力
最後まで、いや読み終わっても、しばし続くラストのシーンを想う。

微妙な感情の微妙な機微が心に深く入り込む感覚
冒頭に記した評価は納得の作品でした。