詩的でなんともアンニュイとした物語。第144回芥川賞受賞作品
葉山の別荘で、幼い日を共に過ごした貴子と永遠子の夏から25年後
冒頭の文章で
「二十五年以上むかしの、夏休みの記憶を夢としてみている。
つくられたものなのかほんとうに体験したことなのか
根拠などなにひとつ持ち合わせてないのが夢だというのに
たしかにこれはあの夏の一日のことだという気がしてきいた・・・」
夏の日の思い出・・
記憶の彼方にある霞んでしまったけど
強烈な断片の欠片・・。
自分も幾つかの妙な淡い記憶ってあるんですよね。
懐かしいけど触れたくない物語の真実や結末
人の記憶は不思議と変化するもの
あの時の事実や気持ちは変わらないのに
今の自分の記憶は時と共にトリミングされてしまったり
色褪せていい感じの劣化により心地よかったりするよね。
その薄っすら淡い心の世界を思い出させるな、この本は・・。